オリンピック教室 @ 宮城県蔵王町

こんにちは、小塚です。

 

このところ台風、地震と大きな災害が続いていますがご無事でしょうか?

今も大変な状況で、不安な気持ちでお過ごしの方もおられると思います。

一日も早く平穏な生活に戻れるよう心よりお祈り申し上げます。

 

 

さて、9月8日は宮城県蔵王町の中学校で、JOCオリンピックムーブメント・アンバサダーとして
『オリンピック教室』を実施しました。

 

オリンピック教室とは、オリンピアンが中学生の皆さんに授業形式で
「オリンピック精神」や「オリンピックバリュー」を伝えて、
これらはオリンピックに限ったことはなく、日々の勉強や運動にも大切だと学んでもらう取り組みです。

 

 

授業は2コマあって、1時限目は運動、2時限目は座学です。

まず1時限目の最初にオリンピックの価値を表す3つのキーワードとして、

「エクセレンス(卓越性)」、「フレンドシップ(友情)」、「リスペクト(敬意)」

があると伝えます。

この時点でこの言葉の意味をパッと理解する生徒はほとんどいません。
頭の隅になんとなく置いてもらって運動の授業をスタートします。

 

それから体を動かしていきますが、小塚はいつも長縄跳びをしてもらいます。

クラスを3つの班に分けて、点数を競います。

跳び方は

  • 一人ずつ縄に入って、一人ずつ抜けていく方法
  • 最初から全員が縄の中に入っておく方法

の2種類から選べるというルールで、

①は一人1回跳べば1点、②は全員で跳んだ数×人数を点数とします。

 

跳び始める前に作戦タイムを設けて、どの跳び方にするか話し合ってからやってもらいます。

①が簡単そうに感じますが、通常は②の方が点は稼ぎやすいです。

まずは自分たちの出来る範囲でまずベストを尽くしてもらって
チームごとにバラつきが出たところで
「2回目もやって、1回目との合計を最終結果にする」と伝えて、
(フィギュアスケートはショートとフリーの合計で競いますしね)
では2回目はどうやったら得点を伸ばせるか?を色々考えてもらいます。

 

これは、ルールを理解してその中でいかに工夫できるか?が狙いです。

 

これまでいくつかの学校でやらせてもらってきましたが、
今回すごく新しいなと思ったのが「縄を回さない」作戦。
皆さん、郵便屋さーん、郵便屋さーん、って歌いながら跳ぶ長縄の遊び方をご存知ですか?

あれって最初の方は縄を下半分で揺らしていて上まで回しませんよね。
あの感じで②で跳べば、すごく跳びやすくなります。
ルールで「上まで回さないとダメ」とは言ってないのでオッケーなんです。
しっかりルールを理解したからこそ出て来た、素晴らしい作戦でした。

 

また、チームの人数についてもルールで制限していないから、
校長先生や担任の先生を連れてきて人数を増やして②で跳ぶ作戦もアリです。
単純に 跳んだ数×人数 なので、人数が多い方が有利ですよね。

他にも、縄の片方の端っこを鉄格子に引っ掛けて、縄を回す人を一人に減らして
跳ぶメンバーを一人増やすというチームもあって、これもよく考えたなーと感心しました。
子どもって発想が柔軟なので面白いですね!

小塚はいつも何も言わないんですよ。

ヒントは出さず子どもたちだけで考えてもらいます。

 

 

今回は特別に、クラス全員で跳ぶエキシビション大会もやってみたら、これも面白かったです。

 

②の跳び方は人数が多いと難しくなるんですよね。

今回は23人いたので縄を回す2人を除いて21人。
小塚は、「②だとイチかバチかの賭けになるなー。
きっと①でやる方が数は稼げるだろうな」と想像していました。

 

エキシビションは2分間というルールにしました。
スタートすると、やっぱり縄の中に2列に並んで②で跳び始めましたが
郵便屋さーん、と声を掛けながら下半分で揺らす方法でも1回も跳べない。
これでは無理だ、と1分くらいでみんな気づいたみたいで
途中で①に作戦を切り替えて、一人ずつ跳び始めたんです。

これはすごいな!と驚きました。

 

切り替えってすごく大切です。

例えばフィギュアスケートでジャンプを失敗したとき、
プログラムの後半で作戦を切り替えて、予定の構成から変えなくちゃいけない。

サッカーやラグビーでは「相手がこういう作戦で来てるからこっちは変えよう」ということもあります。
どのスポーツにも言えることですし、社会に出ても一緒ですよね。

 

 

2時限目の座学では、オリンピックのシンボルマークの話や
近代オリンピックの父と言われるクーベルタンの話、
自分のオリンピックに出た経験や、オリンピックを目指して頑張った経験などを
最初に言った3つのキーワードに絡めて話をしました。

 

「エクセレンス」

昨日より今日、今日より明日の自分が良くなっていること。
そのために今、自分は何をすればいいのか?を考えて練習していました。
ただ単に一生懸命練習するだけじゃなくて、

作戦を練って対策を立てることも「頑張ること」の一つ。

コーチやトレーナーとチームを組んで練習に打ち込める環境を作ることも
「頑張ること」の一つですし、体を休めることも「頑張ること」です。

色んな事が「頑張ること」=「エクセレンス」を意味しています。

 

「フレンドシップ」

フィギュアスケートは個人スポーツです。

試合に出場するのは自分だけかもしれないけれど、仲間として一緒に戦ってくれている人がいます。

佐藤信夫先生、トレーナーのデミ先生、いろんな人に支えられています。

 

「リスペクト」

スポーツはルールを守ることで出場できますし、守れないと減点されます。

一番ダメなのはドーピングですよね。

不注意でルールに触れてしまわないようにいつも気を付けていました。

フレンドシップにも関係することですが、
仲間や周りの人への感謝の気持ち、
たくさんの人に後押ししてもらって試合に出ていることを忘れてはいけません。

 

 

小塚は試合でリンクに出ていくとき、佐藤信夫先生に背中をポンとされていました。

それだって、全然知らない人にされても多分背中が痛いだけですよね(笑)

信頼関係を築いているからこそ、あのポンで自信が湧いてくるし
試合に向かっていこうという気持ちになれるんですよね。

 

信頼関係は毎日一緒に練習していくことで生まれるものでもあるので、
エクセレンス、フレンドシップ、リスペクト、3つが全部つながっています。

 

これはスポーツ選手に限った話ではなく、誰にでも当てはまることです。
毎日勉強を頑張ることで成長するし、友達同士で教え合うこともあるでしょう。

テストでカンニングしないのもルールだし、先生の話を聞く姿勢を持つことも、
人を尊重するリスペクトの現れです。

 

「みんなと同じことをオリンピック選手もやっています。

雲の上の遠い存在ではなくみんなと同じ。だからみんなも一緒に頑張ろうね」
というようなことをいつも伝えています。

 

 

そして、座学の最後にはみんなは今日の長縄跳びで何を感じたか?
これからの学校生活にどう生かしていくか?というグループワークをしてもらい、
発表してもらって授業は終わります。

 

この時期だと、文化祭について発表してくれることが多いです。
文化祭って、得点や記録はあまりつかないものですよね。

みんなでどれだけ頑張っていいものにするか、どれだけ自分が頑張ったか。
自分へ挑戦することが大切な行事なので、理解してもらえたんだなと感じます。

 

 

オリンピックってメダルのイメージが強いと思うんですけど
本来のあるべき姿はスポーツを通じた教育なんですよね。

もちろん、メダルを獲ることはすごく素晴らしいけれど、
それだけではなく、自分をいかに高められたかに意義があります。

そこは日本のメディアを通すとあまり流れてこない、オリンピックの本来の姿だと思っています。

 

オリンピックのモットーに「より速く、より高く、より強く」という言葉がありますが
「より」っていうのは、「人より」ではなく、「過去の自分より」なんですよね。

誰かと比べるのではなく、まずは自分がどこまで出来るか挑戦してみよう、

ということをしっかり伝えていきたいと思っています。

 

 

今回の宮城県蔵王町は生徒数がやや少なめでしたが、
みんな元気に体を動かしてくれて、素直な子どもたちでした。

宮城県でのオリンピック教室の開催は初だったそうで、
町役場の方たちもすごく力を入れてくださっていて、見に来てくださいました。

小塚は昨年のオリンピックデーフェスタ(東北3県の復興支援の活動)でも
蔵王町に来ていたこともあり、町役場の方たちとも再会できて嬉しかったです。

 

 

では、また!