こんにちは!小塚崇彦です。
ユーザー・イノベーションなどの研究をしている日本大学の水野学先生に声を掛けていただき、
14日は早稲田大学で行われた『マーケティングカンファレンス2018』に参加してきました。
ユーザーが自分のために製品やサービスを作りだす[ユーザー・イノベーション]は、
今マーケティング学会でもホットワードなのだそうです。
今回、『アスリートによるアスリートのための製品開発』として、
山一ハガネさんと共同開発した「KOZUKA BLADES」を取り上げていただきました!
大衆的なユーザーではない、極一部の専門家やその世界を熟知した最先端の人は
「キワ族」とか「リード・ユーザー」と呼ばれます。
そういった人たちが製品を使っていくうちに、もっとこういうモノが必要なのでは、
と気が付いて新しい製品が生まれるケースがある、という研究がされています。
例えば、マスキングテープ。
元々は建築現場や車の塗装に使うものでした。
雑貨としての用途を広めたのはコラージュ作家などデザインに詳しい女性たちだったそうです。
また、CDディスクが鳥除けに使われることから、
動物園の方が服のような形につなぎ合わせた事例もあるそうです。
マーケティングが専門ではない小塚の言葉で言うと、
「すごく好きなことがあるけど出来ない時は、それを実現できるモノを新しく作ってしまえばいい!」
という発想の転換がポイントだと思います。
いかにクリエイティブに発想が出来るか?は、カンファレンスでのキーワードにもなっていました。
選手の頃の小塚には、
「スケートが好きで頑張って練習したいけど、靴が合わなくて出来ない。
同じメーカーの同じ靴、同じブレードを買っても買う度に形状にバラつきがあり使いづらい」
という悩みがありました。
多くの選手はスケート靴に体を合わせて我慢していましたが、
小塚は「足に合う新しいスケート靴を作れたらいいのに」と思っていました。
そして、ただ思うだけでなく、とにかくそれを色んな人に言い続けました。
いつか賛同して手を挙げてくれる人が現れるはずだと思っていたんです。
スケートに全く関係のなかった山一ハガネさんと、工業に全く関係のなかったスケーターの小塚が
接点を持てたきっかけは、父親に話したことでした。
スケート靴のメーカーをグラフからリスポートに変えようとしたのですが、
イタリアまで足型を取りに来て欲しいと言われたのです。
練習もしなくてはいけない中で、そのためだけにイタリアまで行くのはロスが大きいと思い、うちの両親に何か良いやり方がないものかと度々話しました。
すると父親の友人である税理士さんに話が伝わり、計測の事ならここが良いと山一ハガネさんを紹介してくれました。
山一ハガネさんには優れた3Dスキャナがあり、それで小塚の足を計測してもらったのですが、
計測結果は数値で出てきたのではなく、『アルミニウムの足』となって小塚の目の前にドンと出てきました(笑)。
金属を削り出して作ったのだと聞き、これだけの技術があるならブレードも出来るのでは、と話を持ちかけそれに乗ってくださった、というのが始まりなんです。
「KOZUKA BLADES」は無良君もリード・ユーザーの一人です。
世界のトップ選手として活躍していて、しかもあれだけ大きくてパワフルなジャンプを跳ぶ、まさにキワ族の人。
無良君がこのブレードを実際に履いてくれたことで、耐久性の高さがたくさんの人に伝わりましたよね。
大多数の方に分かりやすく伝えるのもリード・ユーザーの役割の一つです。
ユーザー・イノベーションでは、ユーザーの感覚や専門用語をいかに“通訳”できるか、がカギになります。
例えば、野球のバットを振った感覚を説明する時、選手は「ブン!じゃなくて、ヒュ!っとなるモノを」と言ったりします。
でも、バットのメーカーの人には全く理解出来ないことがほとんど。
こういう状態を「情報の粘着性が高い」と言い、粘着性を低くなるように通訳をして伝えることがユーザー・イノベーションでは大事なのだそうです。
幸いにも、僕は昔から「誰にでも分かるように話をしなさい」と言われることが多い環境でした。
大学院で指導してくださった湯浅先生も、
「幼稚園の子供でも分かるように説明しなさい。
カタカナや専門用語より、なるべく漢字やひらがなを使いなさい」
とおっしゃっていました。
どんなに正確で重要な情報も、分かりにくい事は大多数に伝わらないからです。
フィギュアスケートも、「スーッと伸びる」とか「良く滑る」というスケート用語をよく使いますが、
スケートを全く知らない人たちには理解不能ですよね。
小塚が説明する時は、「野球で例えるなら、回転数が多くて伸びのある球みたいな感じ」と言ったりします。
野球が分からない人には、ボールペンに例えます。
高品質なボールペンって、スルスル~っとストレスなく次の文字を書いていけますよね。
そういう風にフィギュアスケートの感覚を“通訳”できたことも
「KOZUKA BLADES」の開発に役立ったと思いますし、
フィギュアスケート界に“通訳”できる人がもっともっと増えると良いなと思います。
今回のカンファレンスにお誘いくださった水野学先生には、
選手と企業が製品開発した好事例として一緒に論文を書きましょう、とも言っていただきました!
これをきっかけに、元選手のセカンドキャリアが製品開発の方向へ広がると理想的ですね。
このカンファレンスに参加させていただいて、僕自身もすごく勉強になりました。
すごく身になる、実のある時間を過ごせました。
このような機会をいただき、水野学先生にとても感謝しています。
発表後には多くの他業種の方々とスポーツマーケティングやイノベーションについて話せる機会もあり、
スケート靴(ブーツの部分)の開発についてのアイデアやアドバイスも頂くことが出来ました。
最近、スケート靴の他に小塚が気になっているのは、新体操やフィギュアスケートの衣装に使うダイヤストーン。
宝石を扱っている人たちは、ストーンのカットや加工に精通していますよね。
その技術がスポーツの世界に転用できないか、と考えています。
そういう組み合わせを思いつくのが好きなんですが、
「そういう発想が出来る、キワのキワの人なんだね」と言っていただきました。
どうも、フィギュアスケート界のキワ族、小塚崇彦です。(笑)
今後も色々なイノベーションを生み出していきたいですね。
では、また!
…ここ↑にもユーザー・イノベーションを起こせる、と小塚は思っています。